法律相談コラム
2026/02/18

【改正民法クイズ】親権者変更はどう判断される?実務感覚で理解するQ&A10問

離婚後の親権は、子の利益のために必要があれば変更できる制度になっており、改正法施行前に単独親権で離婚した方でも共同親権に変更できる可能性があります。

もっとも、
「申し立てれば変わる」
「合意があれば必ず認められる」
という単純な話ではありません。

この記事では、
令和8年4月1日に施行される改正民法の条文構造と実務解説を踏まえながら、
親権者変更について特に誤解の多いポイント
Q&A形式で整理します。


Q1. 改正民法では、親権者の変更としてどのようなパターンが可能ですか?

答え
改正民法(新民法819条6項)では、
次のすべての変更パターンが可能であることが前提とされています。

  • 単独親権(父または母)から、他方の単独親権への変更

  • 単独親権から共同親権への変更

  • 共同親権から単独親権への変更

根拠条文

  • 新民法819条6項

👉つまり、
「単独→単独」だけでなく、
単独⇄共同という双方向の変更が制度上想定されています。


Q2. 協議によって定められた親権者を変更する場合、裁判所は何を考慮しますか?

答え
裁判所は、次の3点を考慮して
「子の利益のために変更が必要か」を判断します。

  1. 当該協議の経過

  2. その後の事情の変更

  3. その他一切の事情

根拠条文

  • 新民法819条8項

👉

「合意があるかどうか」だけで結論が出るわけではありません。


Q3. 親権者変更の申立人として、改正法で新たに明記されたのは誰ですか?

答え
です(あわせて親族も含まれます)。

子、父母、子の親族が親権者変更の申立権者となりました。

根拠条文

  • 新民法819条6項

👉
改正民法では、
子が手続の客体ではなく主体としても位置づけられています。


Q4. 新民法施行前に離婚して単独親権と定めていた場合でも、施行後に共同親権へ変更できますか?

答え
できます。

新民法施行前に離婚して親権者を定めていた場合であっても、
施行後に
子の利益のために必要があるときは
共同親権へ変更することが可能です。

根拠

  • 附則に関する経過措置の解釈

  • 新民法819条6項


Q5. 単独親権から共同親権への変更が認められないのは、どのような場合ですか?

答え
裁判所が
共同して親権を行うことが困難である
と認める事情がある場合です。

具体的には、
DVや虐待のおそれなど、
「必要的な単独親権事由」に該当するケースです。

根拠条文

  • 新民法819条7項1号,2号

👉
この場合、
共同親権は選択されません。


Q6. 親権者変更の判断要素である「当該協議の経過」とは、何を見ているのですか?

答え
当初の合意が、
対等な関係の下で適切に形成されたものかどうか、
という点です。

例えば、

  • DVや強い支配関係の下での合意ではなかったか

  • 実質的に選択の余地がなかったのではないか

といった事情が検討されます。

  • 父母間の暴力等の有無
  • 家事調停やADR手続の利用の有無
  • 公正証書の作成の有無

なども勘案されます。

根拠条文

  • 新民法819条8項(解釈)


Q7. 子が自ら親権者変更を申し立てる場合、年齢制限はありますか?

答え
年齢制限の規定はありません。

子に意思能力があれば、
法定代理人の同意を得ることなく
申立てをすることができます。


Q8. 父母の一方が単独親権者である場合において、他方の親が「自分を単独親権者にすること」を求めて親権者変更を申し立てた場合、裁判所はどのような視点で検討しますか?

答え
裁判所は、
「親権者を交代させるべきか」という視点だけで判断するわけではありません。

当該事案において、
共同親権とすることが子の利益にかなう状況にあるか
という視点も含めて、
総合的に検討します。

その結果として、

  • 申立人を単独親権者とするのではなく

  • 親権者を父母双方(共同親権)に変更する

という判断がされることもあります。

根拠条文

  • 新民法819条6項

  • 同条7項

  • 同条8項


Q9.(重要)施行前に「新法施行後は共同親権にする」と約束していた場合、必ず共同親権に変更できますか?

答え
いいえ、必ず変更できるわけではありません。

施行前にそのような合意があったとしても、
新民法の施行と同時に自動的に共同親権へ切り替わることはありません。

共同親権へ変更するためには、
施行後に改めて
家庭裁判所での調停または審判手続きを経る必要があり、
その中で裁判所が
子の利益に適うかどうかを審査します。

補足解説

  • 施行前の合意は、変更判断における一事情になり得ます

  • しかし、それだけで結論が決まるものではありません

根拠

  • 新民法819条6項・8項、家事事件手続法272条1項

  • 附則に関する経過措置

  • 出典:家庭の法と裁判58号p13(改正家族法の要点と解説Ⅰ)


Q10. 父母が離婚時に「共同親権とすること」を合意していた場合でも、裁判所の判断により単独親権とされることはありますか?

答え
あります。

父母が共同親権とすることを合意していた場合であっても、
裁判所はその合意に拘束されるものではありません。

子の利益の観点から、
共同して親権を行うことが困難な事情があると認められるときは、
父母の一方を親権者(単独親権)と定めることがあります。

根拠条文

  • 新民法819条7項


本記事で参照している主な条文

  • 民法819条1項、6項、7項、8項

  • 家事事件手続法272条1項

  • 附則に関する経過措置(解釈)


まとめ

改正民法の親権者変更制度は、
「合意があるか」「申立てをしたか」だけで結論が出るものではありません。

常に中心に置かれるのは、
子の利益にかなうかどうかです。

親権者変更を検討する場面では、
条文と制度の構造を踏まえた冷静な整理が不可欠になります。