法律相談コラム
2026/02/24

共同親権で何が単独OK?何は協議が必要?|転居・進学・習い事を小学生家庭で具体解説

共同親権で「何が単独でできて、何は話し合いが必要?」

― 小学生の子どもがいる夫婦の離婚を例に ―

離婚後の共同親権が制度として導入されることで、
「結局、どこまでなら一人で決めていいの?」
「毎回、元配偶者と話し合わないといけないの?」
と不安に感じている方も多いのではないでしょうか。

特に、小学生くらいの子どもがいる場合、
日常生活の中で判断を迫られる場面は想像以上に多くあります。

この記事では、
共同親権のもとで「単独でできること」「協議が必要なこと」を、揉めやすい場面ごとに整理し、
離婚時に何を決めておくと安心なのかを解説します。


この記事で分かること

  • 共同親権でも「単独で決められること」「協議が必要なこと」の基本ルール

  • 小学生の子どもがいる家庭で、実際に揉めやすい判断ポイント

  • 「法律上は単独OK」でも、事前に決めておいた方がよいケース

  • 離婚協議書・共同養育計画で整理しておくべき考え方


まず大前提:共同親権の基本ルール

共同親権では、原則として
父母が共同して親権を行使します。

ただし、例外として次の2つの場合には、
一方の親が単独で親権を行使することが認められています。

① 監護及び教育に関する「日常の行為」

日々の生活の中で生じる、
子どもに重大な影響を与えない行為です。

同居親に限られず、
親子交流中の別居親であっても、
実際に子どもの世話をしている場面では単独で行えます。

② 子の利益のため「急迫の事情」があるとき

話し合いや家庭裁判所の手続きを待っていては、
子どもの利益を害するおそれがある場合です。


揉めやすいポイント別|「単独OK」「協議が必要」

以下では、小学生の子どもがいる家庭で特にトラブルになりやすい場面を取り上げます。


① 転居(引っ越し)

原則:協議が必要

  • 同一学区内であっても

  • 転校を伴わなくても

子どもの転居は、通常「日常の行為」には当たりません。

👉 父母の共同の意思決定が必要です。

例外(単独OK)

  • DVや虐待からの避難など、
    子の利益のため急迫の事情がある場合


② 学校関係

日常の行為(単独OK)

  • 出欠連絡

  • 学校行事(運動会・授業参観など)への参加

  • 三者面談・教育相談への対応

  • 学校の連絡アプリへの登録

協議が必要

  • 入学・転校・転学

  • 高校進学先の決定

  • 留学や長期の教育環境変更

※期限が迫っているなど、急迫の事情がある場合は例外あり


③ 医療・健康管理

― どこまで単独で決めてよい?どこから協議が必要? ―

原則整理(前提)

共同親権下では、

  • 日常的・軽微な医療行為
    → 原則として 単独判断OK

  • 子の将来や身体に重大な影響を与え得る医療行為
    → 原則として 父母の協議が必要

という整理になります
(民法824条の2、法務省Q&A【Q4-9】【Q4-10】【Q4-12】等)。


✅ 単独判断が認められやすい例

  • 発熱・腹痛などでの通常の受診

  • 風邪・感染症に対する一般的な投薬

  • 定期的な通院・経過観察

  • 予防接種(定期接種・任意接種を含む、一般的なもの)

  • 親子交流中の体調不良への対応

 → いずれも「監護及び教育に関する日常の行為」に該当しやすい。


⚠️単独判断が問題になりやすい例

 「日常の行為」を超える可能性が高く、協議が必要となりやすいパターンです。

a 手術・侵襲性の高い医療行為

  • 全身麻酔を伴う手術

  • 身体への不可逆的影響が想定される治療

👉 急迫の事情がある場合以外、原則として 共同での意思決定が必要


b 長期的な投薬・治療方針の決定

  • 精神障害など長期的な投薬治療や入院を伴う治療方針の選択

  • 成長や生活に影響を及ぼす治療方針の選択

👉 「子に重大な影響を与え得る」ため、日常の行為には該当しにくい


c 医療機関・治療方針を大きく変更する判断

  • 長期にわたって治療中の疾患で主治医を変更するとき

  • セカンドオピニオンを超えて治療方針を転換する

👉 疾患の内容や医療内容によっては 協議が必要


d 宗教的・思想的理由に基づく医療拒否

  • 輸血拒否

  • 特定の医療行為を一律に受けさせない判断

👉 子の生命・健康との関係で
強く問題視されやすい領域


e 親子交流や監護分掌に影響する健康判断

  • 治療を理由に親子交流を長期間停止する

  • 医療名目で監護の実態を一方的に固定化する

👉 医療判断そのものだけでなく
「他方親の関与を排除する目的ではないか」
という視点で見られることがある


⚠ 実務上の注意点(医療関係)

法律上は「単独OK」に見える行為でも、

  • 事後的に説明ができない

  • 医師の判断と乖離している

  • 他方親を完全に排除する形で進めた

という場合には、

  • 父母間の人格尊重・協力義務違反
  • 子の人格尊重義務違反

と評価される可能性があり、

  • 将来の親権者指定、親権者変更・監護者指定

いった場面で不利に評価される可能性があります。


▶ 離婚時に決めておくと安心なポイント(医療関係)

離婚協議書・共同養育計画では、たとえば:

  • 通常の受診・投薬は同居親判断

  • 親子交流中の投薬は別居親判断
  • 手術・入院・長期治療は事前協議

  • 緊急時の判断と事後報告方法

  • 医療情報の共有方法(診断内容・通院先、医師との面談への別居親の同席)

  • 単独の判断で行った投薬・治療についての情報共有方法
  • 子に持病や障害がある場合や手術予定がある場合・・・情報共有方法、入院時のお見舞いのローテーション
  • アレルギー、食べられない物、飲めない薬などの情報共有

あらかじめ言語化しておくと、
感情的な衝突をかなり減らせます。

医療機関が板挟みになって治療が遅れる等の最悪の状況を避けることができます。


④ 習い事・放課後の過ごし方

― 「日常」だけど、実は揉めやすい領域 ―

原則整理

習い事や放課後の過ごし方は、原則として

  • 「監護及び教育に関する日常の行為」
    → 単独判断が認められやすい

とされています
(民法824条の2第2項、法務省Q&A【Q4-21】【Q4-23】等)。

ただし、すべてが無条件に単独OKというわけではありません


✅ 単独判断が認められやすい例

  • 学習塾への通塾

  • スポーツ教室・音楽教室など一般的な習い事

  • 放課後の友人関係・遊び方

  • 高校生のアルバイト(短時間・補助的なもの)

👉 いずれも
「子の生活に重大な影響を与えない範囲」であれば
日常の行為として扱われやすい。


⚠ 事前協議が望ましい(実務上重要)ケース

次のような場合は、
形式的には単独OKに見えても、事前協議をしておいた方が安全です。

a 費用負担が大きい習い事

  • 高額な月謝

  • 遠征費・用具代が継続的に発生するもの

👉 養育費・費用分担との関係で紛争化しやすい


b 子の生活リズムを大きく変える場合

  • 毎日の通塾で帰宅が大幅に遅くなる

  • 学業や健康への影響が懸念される場合

👉 「日常の行為」を超えると評価される余地あり


c 親子交流や監護分掌に支障が出る場合(※重要)

  • 習い事が親子交流の日時と恒常的に衝突する

  • 監護分掌のスケジュールを事実上変更する内容

👉 単独判断を続けると「人格尊重・協力義務違反」と評価されるおそれ


d 子の意思を巡って父母の認識が大きく食い違う場合

  • 一方は「本人が強く希望」と主張

  • 他方は「無理をさせている」と感じている

👉 子の年齢・発達段階に応じた丁寧な協議が望ましい

👉 トラブルになってから子どもに決めさせるのではなく、

 ふだんから子どもの気持ちを丁寧に聴く習慣を持つことが望ましい。


▶ 離婚時に決めておくと安心なポイント(習い事関係)

  • 習い事の費用負担ルール

  • 親子交流との優先関係

  • 新規習い事を始める際の相談の仕方

  • 子の意思確認の方法

これらを離婚協議書、公正証書や共同養育計画に落とし込むことで、
後々の不信感を防ぎやすくなります。


e アルバイト(高校以降を想定)

単独OK

  • 放課後の短時間アルバイト

協議が必要

  • 長期間の就労

  • 将来の進路に影響する仕事


⑤ 転居・生活環境の変更

― 「一番揉めやすい」「一番リスクが高い」判断 ―

原則(←極めて重要)

子の転居は、

  • 移動距離にかかわらず

  • 原則として「日常の行為」には該当しない

と明確にされています
(法務省Q&A【Q4-14】)。

👉 同一学区内の引っ越しでも、原則は「要協議」です。


❌ 単独判断が原則NGな例

  • 同一学区内・近距離の転居

  • 転勤に伴う国内転居

  • 生活環境(学校・友人関係)に影響を与える引っ越し

👉 いずれも
父母の共同の意思決定が必要とされます。


✅ 例外的に単独判断が許される場面

「子の利益のため急迫の事情があるとき」

典型例は:

  • DV・虐待からの避難

  • 身の安全を確保するための緊急転居

この場合は、

  • 事前協議なしの転居も

  • 正当化され得る

とされています
(法務省Q&A【Q4-9】【Q4-14】)。

  •  同居親の国内転勤に伴う子の転居

という場合も、

  • 転勤が決まった後の父母間の協議状況
  • 別居親が子の転居に同意しない理由

等を考慮して急迫の事情があるかどうかを個別に判断します。

親の仕事のためだからといって、一方的な判断で子どもを転居させて良いとは限りません。

 


⚠ 実務上の最大の注意点

  • 「急迫の事情」があるかどうかは
    事後的に厳しく検討される

  • 正当な理由がないのに単独判断で子どもを転居させると

    • 人格尊重・協力義務違反

    • 親権者変更・監護者指定で不利
      になる可能性がある

👉 転居は、共同親権下で最も慎重さが求められる判断です。


▶ 離婚時に決めておくと安心なポイント(転居関係)

  • 転居が必要となる場合の協議方法

  • 転居を検討する距離・範囲

  • 親子交流への影響の調整

ここを明確に話し合うことが紛争リスクを低減する上で重要です。

 特に、同居親の転勤が予想される場合は、

  • 転勤の可能性が生じた場合、どの段階で、どこまでの情報を共有するか(内示、内々示、辞令、等)
  • 一定範囲の転居ならば事後連絡で良しとするか(転校なし、隣接校区内、市内・県内、国内等)
  • 転校を伴う場合に子の同居者を交代する可能性(子への説明や子の意向の聴き取り方法も含めて)
  • 親子交流の費用が増加する場合、費用負担をどうするか

等を決めておくことが望ましいでしょう。


⑥ 氏の変更・養子縁組

必ず協議が必要

  • 子どもの氏の変更

  • 再婚相手との養子縁組

いずれも「身分行為」であるため、
単独決定ができる「日常の行為」にはなりません。


共同親権=「全部を話し合わなければならない」ではない

共同親権というと、
「何をするにも元配偶者と協議が必要になる」
というイメージを持たれがちです。

しかし、実際には

  • 日常の行為

  • 急迫の事情

については、
単独で判断できる余地がしっかり残されています。

一方で、
「法律上は単独OK」でも、
現実には感情的対立が生じやすい場面もあります。


離婚時に「決めておく」と安心な理由

離婚後、

  • 価値観の違い

  • 情報共有の不足

  • 小さな不信感

が積み重なると、
「単独OKか、要協議か」という線引き自体が争点になりがちです。

だからこそ、

  • どこまでを単独判断とするか

  • どこからを協議事項とするか

  • 意見が割れたときの調整方法

を、離婚時点で言語化しておくことが重要になります。


まとめ

共同親権は、
法律上は「父母の間で最低限の意思疎通が可能であれば」認められ得る制度です。

しかし実際には、

  • 転居

  • 進学

  • 医療方針

  • 習い事と親子交流の調整

といった場面で、
「日常の行為」なのか
「協議が必要な重要事項」なのか
「急迫の事情」に当たるのか

という評価が、事案ごとに微妙に異なります。

条文は同じでも、

  • 子の年齢

  • これまでの監護状況

  • 父母間の関係性

  • 親子交流の実施状況

  • 事前、事後の協議状況

によっても、結論は変わります。

そのため、共同親権を選択するかどうかや、離婚協議書や共同養育計画に何を書き込むべきかは、
一般論だけでは判断できません。

とくに、

  • 転居の予定がある

  • 監護の分掌を検討している

  • 親子交流の実施が不安定である

  • 医療や教育方針で意見が分かれている

といった事情がある場合は、
共同親権の制度趣旨や最新の実務動向を踏まえて整理する必要があります。

共同親権は新しい制度であり、
これまでの単独親権の離婚実務とは発想が異なる部分も少なくありません。

離婚を決める前、あるいは離婚協議書や公正証書を作成する前に、
共同親権の実務に通じた弁護士に一度整理してもらうことが、将来の紛争リスクを下げる最も確実な方法です。

共同親権は「制度として可能かどうか」と、
「あなたの家庭で本当に機能するかどうか」が必ずしも一致するとは限りません。

だからこそ、
感情が落ち着いている段階で、
冷静な法的整理をしておくことを強くおすすめします。


弁護士相談で確認すべきチェックリスト

Ⅰ あなたが整理しておくべきこと

  • 転居や転勤の予定はあるか

  • 学区や進学方針は決まっているか

  • 続けさせたい習い事や新たに始めたい習い事はあるか、費用負担はどうしたいか

  • 親子交流の頻度は現在どの程度で、将来どうしたいか

  • 再婚など生活環境が大きく変わる具体的な見通しがあるか

  • 子どもの持病や障害、入院予定
  • 子どもの学校行事への参加についてどうしたいか

Ⅱ 弁護士に確認すべきこと

  • 自分のケースで「日常の行為」と評価されそうな範囲はどこか

  • 転居した場合のリスクはどの程度か

  • 医療判断で揉めた場合の見通しはどうか

  • 協議がまとまらなかった場合の具体的な手続は何か


※この記事は、家庭の法と裁判58~60号の改正民法の解説記事や法務省Q&Aを参考にしていますが、弁護士個人の経験や見解も多く含まれています。