この記事で分かること
この記事では、改正民法・改正家事事件手続法について、
『家庭の法と裁判』58号・59号の解説に基づき、次の点が分かります。
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「面会交流」から「親子交流」へと名称が変わった理由
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親子交流と監護の分掌は、何が同じで何が違うのか
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子どもと一緒にいる間、
親は どこまで単独で判断できるのか -
父母の関係が悪くても、
親子交流が認められる場合があるのはどんなときか -
宿泊を伴う交流が増えたとき、
裁判所はどのように制度を整理するのか -
「期間の分掌」が難しい場合、
直ちに却下されるのか、それとも別の形が検討されるのか -
子の引渡しについて、
強制執行が想定される場面と、慎重とされる場面の違い -
「親子交流の試行的実施」とは何か
どの手続で使われるのか
「制度の名前」ではなく、
自分のケースをどう整理すればよいかという視点で読める構成にしています。
はじめに
改正民法では、
これまで実務で使われてきた「面会交流」という考え方が整理され、
「親子交流」や「監護の分掌」といった制度が明確に位置づけられました。
もっとも、
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親子交流と監護の分掌は何が違うのか
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どちらが自分のケースに近いのか
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裁判所はどう考えているのか
は、条文を読んだだけでは分かりにくいのが実情です。
そこで本記事では、
「家庭の法と裁判」58号・59号の解説に基づき、
当事者の方が制度を整理できるよう、クイズ形式でまとめました。
Q1. これまで「面会交流」や「面接交渉」と呼ばれていた制度は、改正法では何という名称になりましたか?
答え
「親子交流」です。
解説
従来の「面会」という言葉は、
限られた時間で一時的に対面させるだけ、
という印象を与えかねないものでした。
そこで改正法では、
「父又は母と子との交流」という表現に整理され、
今後はこれを指して
「親子交流」という用語が一般的に用いられます。
この名称変更には、
親子の関係を「一時的な接触」ではなく、
継続的な関係として捉えるという考え方が反映されています。
出典
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家庭の法と裁判59号p27
Q2. 「期間の分掌」と「親子交流」では、子どもと一緒にいる間の「親の権限」はどう違いますか?
答え
期間の分掌
その期間中は、担当する親が
日常の行為について単独で包括的・優先的な権限を持ちます。
親子交流
あくまで「交流」であり、
全面的な身上監護権が委ねられるとは限りません。
ただし、共同親権者であれば、親子交流中の日常行為を単独で行うことができます。
解説
期間の分掌では、
担当期間中の親が、
旅行・習い事・軽微な医療行為など、
監護及び教育に関する日常の行為を自らの判断で行えます。
一方、親子交流は、
監護全体が移る制度ではありません。
ただし、共同親権の場合には、交流中の日常行為も単独で行うことができると考えられています。
出典
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家庭の法と裁判58号 p20
Q3. 父母間の協力関係は、「期間の分掌」と「親子交流」で同じくらい重要ですか?
答え
重要性の置き方が異なります。
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期間の分掌:
父母が緊密に協力し合える関係を安定して継続できることが前提 -
親子交流:
父母の関係に課題があっても、
別居親と子との関係性に大きな問題がなければ、直接交流が認められ得る
解説
59号では、
「親同士は顔を合わせることができないなど、親同士の関係性に課題はあるものの、
別居親と子との関係性に大きな問題は見いだせない」
場合に、
親子の直接交流が認められ得ると説明されています。
親子交流では、
父母関係よりも親子関係がより重視される
という整理が可能です。
出典
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家庭の法と裁判58号 p20
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家庭の法と裁判59号 p35
Q4. 実態として、「期間の分掌」と「親子交流」の区別が難しくなるのはどのようなケースですか?
答え
宿泊を伴う親子交流が頻回に行われるような場合です。
解説
このような場合、
期間の分掌とも親子交流とも捉え得るため、
家庭の法と裁判58号では、
👉 当事者に対し、必要な場合には申立ての趣旨を変更するよう促す等の運用が考えられる
と説明されています。
概念論にこだわって入口を狭めるのではなく、
実態と子の利益を重視し、当事者の手続選択を尊重する
という姿勢が示されています。
出典
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家庭の法と裁判58号 p20
Q5. 「期間の分掌」が相当でないと判断された場合、裁判所はどう対応することがありますか?
答え
直ちに却下するのではなく、申立の趣旨を「親子交流の定め」に変更するよう促す運用も考えられます。
解説
この「親子交流の定め」には、
宿泊を伴う交流だけでなく、
日帰り交流や間接交流も含めて再調整する
という意味があります。
もっとも、
申立の趣旨の変更がなされない場合には、
期間の分掌の申立てが却下されることもあり得る
とされています。
出典
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家庭の法と裁判58号 p20
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家庭の法と裁判58号 p27(脚注5)
Q6. 子の引渡しについて、強制執行の扱いに違いはありますか?
答え
あります。
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期間の分掌:
交替のたびに強制的な子の引渡しを命じることは、ほとんどないとされています。 -
親子交流:
制度的にも運用上も、必要なときには強制執行が想定される場合もあります。
解説
改正後の家事事件手続法154条3項により、
いずれも強制執行の対象となり得ますが、
家庭の法と裁判58号では、
期間の分掌については強制力行使に消極的な整理が示されています。
出典
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家事事件手続法154条3項
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家庭の法と裁判58号 p20
Q7. 「親子交流の試行的実施」は、どの制度で行われますか?
答え
親子交流でも、監護の分掌でも行われることがあります。
解説
改正後の家事事件手続法152条の3では、
家庭裁判所は、
子の心身の状態に照らして不相当でない場合に、
親子交流の試行的実施を促すことができる
とされています。
対象事件は
「子の監護に関する処分の審判事件(養育費を除く)」
とされているため、
期間の分掌を検討する手続でも実施され得ます。
出典
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家事事件手続法152条の3
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家庭の法と裁判59号 p28
Q8. 住居間の距離や移動時間は、どちらの判断で特に重視されますか?
答え
期間の分掌です。
解説
交替で生活することが現実的かどうかが重要になるため、
距離や移動時間は、
期間の分掌特有の考慮要素とされています。
出典
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家庭の法と裁判58号 p20
Q9. 父母が顔を合わせられない場合でも、親子交流は可能ですか?
答え
可能な場合があります。
解説
親子交流では、
父母関係よりも親子関係が重視されます。
必要に応じて、
支援機関の利用などの工夫が想定されています。
一方、期間の分掌では、
父母の協力関係が前提とされ、
慎重な判断がされると説明されています。
出典
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家庭の法と裁判59号 p35
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家庭の法と裁判58号 p20
弁護士相談で確認すべきチェックリスト
この記事を読んだうえで弁護士に相談する際は、
次の点を整理しておくと、相談が具体的になります。
① 現在の関係性について
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父母間の関係は、
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連絡が取れるか
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顔を合わせられるか
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支援機関を介せば可能か
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子どもと別居親との関係性に、
大きな問題があると指摘されたことはあるか
② 子どもの生活実態
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現在の生活拠点はどこか
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宿泊を伴う交流は、
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すでに行われているか
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月に何回程度か
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子どもの年齢・体調・学校や保育園への影響
③ 希望する制度の整理
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自分が考えている子どもとの関わり方は、
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親子交流の充実か
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監護の分掌(交替での監護)か
- どちらにも当てはまりそうか
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「宿泊を伴う交流」なのか
「一定期間の交替監護」を考えているのか
④ 手続きの進め方
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親子交流の調停・審判なのか
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監護の分掌の申立てなのか
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状況に応じて申立ての趣旨を変更する可能性はあるか
⑤ 実施方法の現実性
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引渡し方法(直接/親族や第三者/支援機関)
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強制執行が想定される可能性があるか
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申立後に「親子交流の試行的実施」を希望するか
おわりに
親子交流と監護の分掌は、
「どちらが上か」ではなく、
子の利益と実態に応じて使い分けられる制度です。
制度を正しく理解することは、
自分の事件を考えるための大きな助けになりますね。