この記事で分かること
-
共同親権の原則(共同)と例外(単独OK)の“判断軸”が理解できる
-
同居親・別居親それぞれが、現場で迷いやすい場面(転居/学校/習い事/医療/氏の変更)を整理できる
-
「単独OK」「要協議」早見表(法務省Q&AのQ番号付き)で、相談前に論点を整理できる
-
どうしても揉めてしまったときの“次の一手”(特定事項の親権行使者指定)が分かる
改正民法「共同親権者が単独でできること」クイズ(全11問)
-
根拠条文の中心:改正後民法824条の2
-
出典:法務省Q&A+補助的に『家庭の法と裁判58号』
- 記事で引用した条文は令和8年4月1日に施行される改正後の民法です
共同親権で「単独OK」「要協議」早見表(法務省Q&A質問番号付き)
| 具体的な場面 | 結論 | どこで根拠を確認?(Q番号) |
|---|---|---|
| 日常行為とは何? | 単独OKの範囲を定義 | Q4-10, Q4-12 |
| 急迫の事情とは何? | 単独OKのもう一つの例外 | Q4-9 |
| 「単独OK」は同居親だけ? | 別居親もあり得る | Q4-7, Q4-11 |
| 近所の引っ越し(同一学区内) | 要協議(原則) | Q4-14 |
| DV・虐待から避難の転居 | 単独OK(急迫) | Q4-9, Q4-14 |
| 学校行事(運動会・卒業式)に別居親が参加 | 原則 単独OK(参加判断) | Q4-20 |
| 習い事(塾・水泳など) | 通常 単独OK | Q4-21 |
| 入学・退学・転学などの手続 | 要協議 | Q4-16 |
| 入学期限が迫る等で間に合わない | 例外で 単独OK(急迫) も | Q4-9, Q4-17 |
| 高校生の放課後バイト | 通常 単独OK(※就職は別) | Q4-23 |
| 氏の変更・養子縁組 | 要協議(日常行為ではない) | Q4-25 |
※ここでの「単独OK」は、“法律上単独で親権行使できる場面がある”という意味です。
※実務では、相手方との関係・学校や医療機関の運用・事実関係の食い違いで揉めることがあるので、「単独OK=いつでも安全」ではない点は押さえてください(この“ズレ”を減らすために、記事の最後に駄目押しのチェックリストを掲載しました)。
Q1. 共同親権の原則と、単独でできる例外は?
問い:離婚して共同親権となった場合、父母は原則として共同で親権を行使しますが、例外的に「一方が単独で親権を行使できる」のはどのような場合ですか?(2つ)
正解:
① 監護及び教育に関する日常の行為を行う場合
② 子の利益のため急迫の事情があるとき
根拠条文:民法824条の2
出典:法務省Q&A Q4-9, Q4-10
Q2. 「日常の行為」を単独でできるのは同居親だけ?
問い:「監護及び教育に関する日常の行為」を単独で行えるのは、現に子どもと生活している同居親に限られますか?
正解:いいえ、同居親に限られません。別居親でも、親子交流などで実際に子の世話をする場面があれば、日常の行為に係る単独行使が想定されます。
根拠条文:民法824条の2
出典:法務省Q&A Q4-7, Q4-11
Q3.【同居親の転居】「同一学区内の近所の引っ越し」でも単独で決めていい?
問い:同居親が、転校を伴わない「同一学区内の近所の引っ越し」をする場合、別居親の同意なく単独で決められますか?
正解:原則としてできません(要協議)。子の転居は移動距離にかかわらず、通常は子の生活に重大な影響を与え得るため、基本的に日常行為に当たりません。
根拠条文:民法824条の2
出典:法務省Q&A Q4-14
Q4.【別居親の行事参加】運動会・卒業式に参加するのは単独で決められる?
問い:別居親が、子どもの運動会や卒業式など学校行事に参加することは、同居親の同意がなくても単独で判断できますか?
正解:原則としてできます。
ただし、学校側は「学校管理」の観点から、事情によって参加を制限する対応をとる可能性も示されています。
根拠条文:民法824条の2
出典:法務省Q&A Q4-20
Q5.【習い事】塾・水泳教室は「日常の行為」?
問い:同居親が子どもを学習塾に通わせる/水泳教室などの一般的な習い事を始めることを、単独で決められますか?
正解:通常は決められます(単独OK)。習い事は通常「日常の行為」に当たると整理されています。
根拠条文:民法824条の2
出典:法務省Q&A Q4-21
Q6.【進学・入学手続】高校進学と入学手続(在学契約)は単独OK?
問い:同居親が、子どもの進学先(高校など)を別居親に無断で決定し、入学手続(在学契約)を単独で行えますか?
正解:原則としてできません(要協議)。
入学・退学・転学などは「日常の行為に当たらない例」として整理されています。
ただし、期限が迫って間に合わない等で、協議や家裁手続を待てない場合は、個別事情により「急迫」に当たり得る場面があり得ます。
根拠条文:民法824条の2
出典:法務省Q&A Q4-16, Q4-17, Q4-9
Q7.【アルバイト】高校生の放課後バイトは単独で許可できる?
問い:高校生の子どもが「放課後にアルバイトをしたい」と言った場合、同居親は単独で許可できますか?
正解:通常はできます(単独OK)。
ただし「長期間勤務する会社への就職の許可」など、重大な影響を与え得るものは日常行為に当たらない、と整理されています。
根拠条文:民法824条の2
出典:法務省Q&A Q4-23
Q8.【緊急医療】親子交流中に急病、同意が取れなくても単独で手術同意できる?
問い:別居親が親子交流中に、子どもが急病になり緊急の処置が必要になりました。同居親の同意が取れなくても単独で対応できますか?
正解:状況によりできます。「子の利益のため急迫の事情」があるときの例として、緊急医療が挙げられています。
根拠条文:民法824条の2
出典:法務省Q&A Q4-9
Q9.【DV・虐待避難】別居親に無断で遠方へ転居はできる?
問い:同居親が、別居親からのDVや虐待から避難するために、別居親に無断で子を連れて遠方へ転居できますか?
正解:状況によりできます。DV・虐待からの避難は「急迫の事情」の例として示されています。
また、転居は原則日常行為ではないが、DV・虐待避難では急迫が肯定され得る、という整理です。
根拠条文:民法824条の2
出典:法務省Q&A Q4-9, Q4-14
Q10.【氏の変更】離婚後、子を自分の姓に変える手続は単独でできる?
問い:同居親が、離婚後に自分と同じ氏(名字)を名乗らせるため、子の「氏の変更」を単独で行えますか?
正解:できません(要協議)。氏の変更や養子縁組は、監護・教育の日常行為ではなく「身分関係に関する行為」であるため、共同で行う必要があります。
根拠条文:民法824条の2
出典:法務省Q&A Q4-25
(補助:『家庭の法と裁判58号』第4章 p36)
Q11.【最後の手段】重要事項でどうしても合意できないときは?
問い:子の進学先など「共同で決めるべき重要事項」について協議がまとまらない場合、どうすることができますか?
正解:家庭裁判所に、「特定の事項」に係る親権行使者を定める手続を求めることができます。
根拠条文:民法824条の2
出典:法務省Q&A Q4-27, Q4-28
弁護士相談で確認すべきチェックリスト(共同親権者の単独行為が争点のとき)
-
争っている行為は、どれに該当しそうか?
-
日常行為(Q4-10, Q4-12) なのか
-
急迫(Q4-9) なのか
-
それとも 要協議(Q4-16, Q4-14, Q4-25 等) なのか
-
-
「急迫」を主張するなら、“待てない”事情は何か(例:期限・危険・緊急性)。
-
事実関係の整理:
-
いつ/誰が/何を/どの手段で相手に連絡したか(協議打診の履歴)
-
-
学校など第三者が関わるなら:
-
学校関係の場合: 学校側の運用実態、学校側が求めている報告内容や提出書面(学校管理の観点からの参加制限があり得る:Q4-20)
-
-
転居・進学など大きい論点は:
-
単独で動いた場合に、後で紛争化する可能性が高い(→具体的な紛争の態様についてQ4-8参照)
-
-
どうしても合意できない重要事項は:
-
特定事項の親権行使者指定(Q4-27, Q4-28)を検討する余地
- ただし、日常行為・緊急行為に該当する行為は「特定事項」に該当しないことに注意
-
※Q*-**は法務省Q&Aの質問番号です。
まとめ
お子様と同居する親も別居する親も、単独で判断できることは多々ありますが、うっかり一人で判断すると後々トラブルになってしまう思わぬ落とし穴も少なくありません。
離婚する際、専門家のアドバイスを聞き、自分なりに判断基準を整理しておくことが大切です。